2022年4月9日〜5月8日に開催の「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」に行ってきました。
展示会場が、京都の街中にある歴史的建造物やモダンな近現代建築など11箇所に散らばっているので、これは良いランニングコースになるのではと思い、走って周ってきました!
そこで今回は、走って周ったKYOTOGRAPHIEをレポート。前半は私が周って特に心動かされたところやおすすめの展示、後半では実際に会場を周ったランニングコースを紹介します。走らなくても、これから行く!という方の参考になれば幸いです。
「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」とは
まずは「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」ってなに?という方のために、簡単に概要を紹介します。
2022/4/9~5/8開催。日本で有数の国際的な写真祭
「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」は、世界屈指の文化都市・京都を舞台に開催される、日本でも数少ない国際的な写真祭です。
京都がもっとも美しいと言われる春に毎年開催されていて、2022年は4月9日(土)から5月8日(日)までです。そして今年は記念すべき10th Anniversaryになります。
KYOTOGRAPHIEは、その時々の社会情勢や、世界の状況を踏まえ、「今」大事なことをフェスティバルのテーマを掲げていて、2022年のテーマは、「ONE」となっています。
京都市内の美術館や町家など11か所で開催
会場は、京都市内にある歴史的建造物やモダンな近現代建築の空間に展開されています。河原町や烏丸御池周辺や出町柳など、全部で11箇所あります。どの会場も京都ならではの趣があり、それぞれの空間の中でしか表現できない様々な展示がされていて、空間を含めて作品となっているところが見どころです。
国内外のアーティスト20人と1団体らによる個性豊かな展覧会
ガーナ、フランス、アメリカ、イタリア、スペインと日本のアーティスト20人と1団体が参加しています。アーティストごとに様々な個性があり、会場を巡るごとにいろんな刺激をもらえます。
下記は会場、アーティスト、会場時間、チケット料金の一覧です。チケットは会場ごとに購入できますが、5,000円(一般)のパスポートチケットなら11会場1回ずつ入場できます。それぞれで買うと8,300円なので、たくさん周るならパスポートチケットの方が断然お得です。ちなみに私は平日に行ったので、平日限定のパスポートチケットが4,000円で購入できました。
「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」レポート
私は写真を観ることはもちろん、自分で撮ることも大好きですが、今回KYOTOGRAPHIEを周って様々なアーティストの作品に触れてみて、自分がどんな写真に共感するのか、どんな表現に惹かれるのかを発見できた気がします。20人と1団体、11会場の展示の中で、特に私が気になったもの、おすすめの展示を5つ紹介します。
Prince Gyasi(プリンス・ジャスィ)「いろいろ アクラ──キョウト」
私が最も惹かれたのは、ガーナ出身のアーティスト、プリンス・ジャスィと出町桝形商店街のコラボレーション。スマートフォンから作品制作を始めたジャスィは、色と色の相互作用、そして色から連想されるものに注意を払いながら、自分の作品が見る人にポジティブな影響を与えるように心がけていると語っています。確かに、彼の作品が表現する色からは、ポジティブなエネルギーと、どこか哀愁みたいなものを感じます。
そして展示会場になっている出町桝形商店街は、日本の日常、市場の営みから生まれる「色」やそこに生きる「人」が混在しています。ここにジャスィの写真で切り取られている「色」や「人」が存在した瞬間に生まれる違和感と不思議な調和が、新しい一つのアートになっていると感じました。この展示から私は、日常の中で他愛無いように見える全ての物や人が、捉え方一つで無限の価値を生む可能性を再認識させられた気がしました。個々の個性を尊重する「ONE」という今年のKYOTOGRAPHIEのテーマにも通じているのかなと思います。
会場:出町桝形商店街
Prince Gyasi(プリンス・ジャスィ)「いろいろ アクラ──キョウト」展示詳細
イサベル・ムニョス×田中泯×山口源兵衛「BORN-ACT-EXIST」
西陣織の帯をつくる誉田屋源兵衛の黒蔵、奥座敷では、イザベル・ムニョスとのコラボレーション展示。
イサベル・ムニョスは2017年春にKYOTOGRAPHIEで誉田屋で展示をした際、誉田屋源兵衛当主の山口源兵衛が見せた誉田屋の織物や日本の古布にいたく感動し、日本の根源的な存在(exist)に興味を持ち、「日本の起源を探究したい」と日本を被写体とした作品の制作を決意。誉田屋源兵衛の工房があり太古の自然が残る奄美大島で、ダンサーの田中泯と山口源兵衛を撮影し、その写真と映像作品を展示が展示されています。
この展示を観たときに私がはじめに思い出したのは、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」でした。美は物体ではなく物体と物体が作り出す陰翳によって生まれるという、日本古来の生活文化から生まれた美意識や価値観など私たちが忘れつつあることを教えてくれる本です。まさにそうした、日本固有の繊細な美が、空間として表現されているように感じました。とにかくめちゃくちゃかっこよかったです。
会場:誉田屋源兵衛 黒蔵、奥座敷
イサベル・ムニョス×田中泯×山口源兵衛「BORN-ACT-EXIST」詳細ページ
Maïmouna Guerresi(マイナーム・ゲレージ)「Rûh|Spirito」
私が単純に写真の美しさに惹かれたのが、イタリア系セネガル人アーティストのマイナーム・ゲレージの展示でした。色や構図の絶妙なバランスが画面の隅々まで完璧に構成し尽くされていて、観ていると緊張感と不安定感が反復するような不思議な感覚になります。都会的な色使いをしながら、どこか神秘的で、ずっと眺めていたくなるような心地良い作品でした。
この展示のテーマは、「Rûh|Spirito」。「Rûh」はアラビア語で「霊」を意味し、「ルーツ」という言葉と組みあわされています。
ゲレージは、イタリアの敬虔なクリスチャンの家に生まれ、セネガルでスーフィズムの教えに出会い、イスラム教に改宗しました。そんな自らの内面の変容を世に伝えたいという思いが、彼女の絵画・彫刻・パフォーマンス・映像・写真・インスタレーション作品のすべてに通じたテーマとなっているそうです。
会場:嶋臺ギャラリー
Maïmouna Guerresi(マイナーム・ゲレージ)「Rûh|Spirito」詳細ページ
鷹巣由佳「予期せぬ予期」
2021年、に新置された「Ruinart Japan Award」を初代受賞した鷹巣由佳の展示。写真を黄赤青緑白の5色に分類し、辞書のように編纂して重厚なサイズの5冊の本に仕上げた作品が受賞作品です。この本を含め、グラフィックデザイナーならではの視点で、写真と印刷、印刷する素材のおもしろさが表現された作品で、観ていてとても楽しく、創作意欲を掻き立てられる展示でした。
会場:y gion
Guy Bourdin(ギイ・ブルダン)「The Absurd and The Sublime」
「VOGUE」などのファッション誌や、シャネルをはじめとするブランドの広告を数多く手掛け、20世紀を代表するファッションフォトグラファーとして名高いギイ・ブルダンの展示。テーマは「The Absurd and The Sublime(滑稽と崇高)」。紙一重の合間を弄ぶような意外性や、緻密な構成によって、ファッション写真を優れた芸術へと昇華させたブルダンの作品が公開されています。1枚1枚が刺激的で美しくてかっこよくて、十分に観つくすには何時間あっても足りないです!
またブルダンの創作過程を見れる貴重なポラロイド写真、雑誌のアーカイブや記録映像なども公開されていて、さらに強い憧れを感じました。
会場:京都文化博物館 別館
Guy Bourdin(ギイ・ブルダン)「The Absurd and The Sublime」詳細ページ
「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」11会場を巡るランニングコース【約8km】
KYOTOGRAPHIEの会場を巡るには、電車やバス、レンタサイクルなどの手段がありますが、今回私は走って巡ることに。会場を巡るという楽しさがあるので、普通に京都を走るより何倍も充実感があります。今回私が巡ったコースを紹介します!トータルで約8kmです。
⒈スタートはKYOTOGRAPHIE Information Machiya(八竹庵)
総合案内がある八竹庵(旧川崎家住宅)からスタートするのがおすすめ。その近辺に展示会場がたくさん集まっているので、まずはそこから巡ります。上の地図では番号が重なって全て見えていないですが、総合案内を含めると7つの展示会場があります。
⒉祇園四条周辺の会場を巡る
総合案内の会場から2kmほど走って祇園四条に向かいます。この周辺には5つの会場があります。ちなみにそのうちの京都現代美術館はパスポートチケットでは入場できず、別途チケットを買う必要があるので要注意です。(11会場には入れていません)
⒊琵琶湖疏水記念館へ
次は琵琶湖疏水記念館へ。祇園四条から2kmほどです。街中を走るので、京都のお洒落なお店を見ながら楽しく走れます。
⒋京都市美術館別館へ
次に京都市美術館別館。琵琶湖疎水記念館からは1kmほどなのですぐです!
⒌ゴールは出町桝形商店街
最後は出町桝形商店街でゴール。鴨川沿いを優雅に走れます。これぞ京都ランニングという感じで気持ち良いですよ!鴨川デルタが見えてきたら地上に上がり、商店街へ向かいます。ちなみに帰りは出町柳駅がすぐ近くです。
以上、ランニングで巡ったKYOTOGRAPHIEのレポートでした!自分の感性を刺激しつつ、有酸素運動もするという密度の濃い時間でした。カメラを背負いながら走るのはけっこう疲れましたが…(笑)。なかなか走って巡ろうという方は少ないかもしれませんが、レンタサイクルなども充実しているので、自転車で巡るのもおすすめです!また全部を巡らなくても、気になったところだけ観てみるのも良いと思います。ゴールデンウィーク中も開催されているので、ぜひこの機会に行ってみてください!